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16/17シーズン総括~欧州地図に刻んだ❌❌❌~   

2017年 06月 16日

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エールディビジではフェイエノールトに終始首位をキープされ、最後までプレッシャーを与え続けるも2位。KNVBベーカーは早期敗退。欧州のCLプレーオフではロシアでの悪夢の夜を経験して舞台はELへ。ELでは決勝まで進むもマンチェスターユナイテッドに完全に良さを消されてなにもできずに準優勝。フランク・デブールの長期政権からペーター・ボスに替えて挑んだ16/17シーズンのアヤックスは結局3年連続の無冠という残念な結果で終了しました。
しかし本当に残念なシーズンだったのかというと、おそらく答えはNee。個人的にも、それなりに長い期間アヤックスを追いかけていますが、今シーズンは妙な満足感があります。

EL決勝進出が決まったときだったか、決勝で敗れたときだったか忘れましたが、キャプテンのクラーセンや他数名のコメントで「欧州のフットボール地図にアヤックスが戻ってきた」といった趣旨の発言があったと記憶しています。多くのアヤックスファンも「我々は戻ってきた」と声高に叫びました。無冠に終わったシーズンにありながらここ十数年なかった満足感の理由はまさにこれらの言葉に尽きるのではないか。そんなふうに感じています。

そんな充実したシーズンにありながら、ボス監督はわずか1年でアムステルダムを去ることになりました。賛否あるようですがアヤックスに適任と思われる監督との離別は率直に言って残念です。
後任監督によってどう変化していくのかは気がかりではありますが(ヨング・アヤックス監督だったマルセル・カイザーのトップ監昇格が決定的な模様)、ボス監督が何をもたらしたのかを一度整理してみたいと思います。

■苦渋を味わった過去
1年を振り返る前に、ここで一旦歴史を振り返ってアヤックス周辺を取り巻いていた雰囲気を確認したいと思います。読み飛ばしても問題ありません。
アヤックスが欧州の舞台で脚光を浴びたのは、まずは1970年代のミケルス監督とヨハンクライフ中心のトータルフットボールによるCL3連覇。そして1995年のCL優勝、2002年のヤングアヤックス躍進(CLベスト8)が挙げられるかと思います。しかしその後はボスマン判決や資金格差拡大の影響もあって、満足な結果を得ることなく大会を去る年が続きました。UEFA CupがEuropa Leagueに変わって以来7年間毎年出場しているのがアヤックスのみでありながらベスト8にすら到達できていなかったという残念な状況だったのです。
「アヤックスは今や欧州フットボールの超強豪ではない。アヤックスはもはやアヤックスですらない。」2010年にはクライフにそんな手厳しいコメントも浴びせられてしまいました。
さらに、欧州から取り残されたのは成績だけではありません。トータルフットボールでオランダやアヤックスが世界を席巻した1970年代は戦術的にも最先端を行っていましたが、現在は取り残されてしまったように思えます。
世界的な潮流としては戦術に関しては近年特に発展目覚ましく、グアルディオラ、ビエルサ、ラングニック、さらにはそこから派生した若手監督が多く台頭し、興味深いフットボールを展開しています。
自分はアヤックスばかり見ていたため、これら戦術のトレンドには疎かったのですが、ELでアヤックスがロジャー・シュミットのザルツブルクに完膚なきまでにやられたのを見て「なんなんだこれは……」と衝撃を受けたのを未だに思い出します。この間知ったことですが、あのゲーゲンプレッシングのコンセプトを例えると『猟犬でウサギを仕留める狩り』。あぁ、あのときアヤックスは狩られたのか…。
個人的な感想にはなりますが、そういったトレンドから取り残されている疎外感があり、特にクライフの系譜を継いだグアルディオラが注目を集めているのに本家のアヤックスは…という憤りは少なからず潜在的にありました(ここ1,2年でそのあたり多少動きはあるようですが)。前監督のフランク・デブールが良くなかったというわけでもないのですが、ボールを保持しようというそのスタイルは安定している反面、突破口が見えず停滞感があったことは否めないと思います。

■監督交代の劇薬
そんな中アヤックスの監督に就任したのがペーター・ボス。アペルドールン出身のこの監督はキャリア的にはフェイエノールトにも縁があるからか、一部就任に懐疑的な見方もあったと聞きます。しかし、現役時代のプレースタイルとは異なり、攻撃的なスタイルを標榜する"最後の理想主義者"とも言われたこの指揮官は、アヤックスにEL決勝進出という結果だけでなく、戦術的にも以前とは異なるものをもたらしました。外様監督を据えたこのやり方はアヤックスにとっては薬にも毒にもなり得る改革だったわけですが…。
その中身を自分なりに少しずつ掘り下げてみます。

■スタメン
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16/17のアヤックス。基本フォーメーションは4-3-3です。
攻撃時に特徴的なのは左からの崩し。WGのユネスはボールを持ってからドリブルで仕掛けるのが得意なためワイドに開くことが多く、その間のハーフスペースにLSB(シンクフラーフェンまたはフィールヘフェル)が侵入する形が効果的でした。
リトリートしてからの守備は4-4-2。CFのドルベリとLWGのユネス(またはクラーセン?)がファーストDFに。ユネスが空いた位置には中盤がスライドして埋めるか、またはSBが埋めてCBとアンカーがスライドすることで対処していたと思います。
攻→守のトランジションは5秒ルールでのハイプレス。VIでわかりやすいものがあったので借用。相手ボールになった瞬間、ボールに近い4人がボールホルダーを囲い、その間に他の選手がフィールドを縮めるところです(この間、わずか3秒)。
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■選手のコンバート
「ポジションチェンジが今後のトレンドになるだろう。」
現在最も注目されている監督の一人であるホッフェンハイムのナーゲルスマン監督は以前あるインタビューでそう語っていました。ポジションチェンジとコンバートを同列に考えて良いのかはわかりませんが、ボス監督は選手のコンバートを多用し、フレキシブルにチームを構築しました。

・シェーネ
昨シーズンとの最も大きな違いのひとつがシェーネのポジション。アヤックスの若い選手に囲まれひときわ渋みが際立つこのイケメンデンマーク人はこれまでもウィングやインサイドハーフを主戦上に活躍しており、困ったときはシェーネが決めてくれると思えるほど以前から頼りになる存在でした。しかしWGとIHどちらが適正かは曖昧であり、若手の成長も重要なアヤックスにおいては控えに回されることも少なくありませんでした。
そんな中はまったのがアンカーへのコンバート。ポジションがひとつ下がったのでさすがにゴールやアシストは減りましたが、ここぞというときに頼りになるのは変わらぬまま(28節フェイエノールト戦試合開始直後にFKを直接叩き込んだのは圧巻!)、ビルドアップ面で輝きを発揮しました。開いた2CBの間にシェーネが割って入りGKのオナナからパスを受けそこからアヤックスの攻撃が展開される。シーズンで何度もみた光景です。
世界はシェーネを中心に廻っていたと言っても過言ではないのです。
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・シンクフラーフェン
シンクフラーフェンもシェーネと似ていて、本来はIHなのかもしれませんが昨シーズンはクラーセンとバズールがいたためWGでのプレー機会が多かった選手。ただテクニックはあるものの相手を圧倒するようなプレースタイルではないため目立った活躍ができず、移籍金の割には…と思ってしまったのはここだけの話。
そんなシンクフラーフェンに対してボス監督が考えたのがLSBへのコンバート。インサイドMFのSB起用というやつです。元々IHのシンクフラーフェンが攻撃時にはIH化。使い道が難しかった彼を活かす道を見事に見つけたな、と唸るしかない起用法です。
しかしそれも良いことばかりではなく、守備面には脆弱性を抱えます。シーズン当初はアヤックスの左サイドにできた広大なスペースを相手に突かれ、何度となくピンチに陥りました。ただそれも一時のこと。いつからかその脆弱性は気にならなくなったのですが、それはなぜか。タックル成功率を取り上げてシンクフラーフェンの守備は言うほど悪くない、そんな記事をシーズン中に読んだこともありました(シーズン終了時の記録はタックル数58、勝率86%と数値的には良い部類です)。守備への慣れ。それもあるかもしれませんが、単純に回りのカバーもうまくなったのではないかと思ってます。シェーネが左サイドをカバー、もしくはフィールヘフェルがカバーしてシェーネがCBにスライド、などといった形で。

・フェルトマン
フェルトマンについてはCBがRSBへということでそれほど大きな変化ではないかもしれません。とはいえ、昨シーズンまでCBのポジションを確立していたフェルトマンではなく、新加入のサンチェスと絶対的ではなかったフィールヘフェル(あるいは17歳のデリフト)をコンビにするなど、なかなかできることではないです。ましてRSBが本職でオランダ代表でもあるテテが控えている状態で。狂気の沙汰かと言いたくなるところですが、少し考えると右は守備を重視して安定を図ったのかな、ということで納得の一手。


■若きタレントの躍進
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今シーズンのアヤックスはスターティングⅪの平均年齢が異常に低く、EL決勝では22歳282日と歴史的にも最も若いということで話題にもなりました。
若いだけでなくそのそれぞれのプレーも印象的。17歳にしてトップレベルでも十分やれることを示したCBのデリフト、父親が有名というだけでなく個人として存在感を見せたクライファート、ビーストとも呼ばれる屈強さとパスセンスを併せ持つサンチェス、細かいタッチで相手を翻弄するドリブラーのユネス、そして冷静沈着にボールをゴールに叩き込みそれを当然というように笑顔すら見せないアイスマンのドルベリ。
ほかにもオナナやトラオレなどまさにヤングタレントの見本市。注目選手を一人挙げろと言われても答えられないほどなのですが、そんな中にあって27歳と今のアヤックスではベテランに分類されるフィールヘフェルが個人的には印象に残りました。チーム状況に応じてCBだけでなくLSBもこなし、編成的に手薄なポジションを埋める役割を引き受けたというだけでなく、LSB時にはシンクフラーフェンと同様攻撃的にもいける意外性、そして大事な場面でゴールを決めてチームを助けてくれた点が印象深いです。特にシャルケとの2ndレグが凄まじく、120分にわたる死闘において、絶望的な状況をひっくり返すゴールをあげただけでなく、ピッチのどこにでも出没していました。
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■改革の弊害
ボス監督は前述の通り選手のコンバートを非常にうまく使い、既存選手を活用した一方で活用できず仲違いした選手も多数。グデリ、バズール、エルガジ、ダイクスは移籍をし、テテとリーデヴァルトはベンチで多くの時間を費やしました。全てデブール監督下の昨シーズンまでは主力だったメンバーです。
どういったところで食い違いがあったのか正確には把握はしていませんが、少なくともダイクスは戦術面で適応しようと頑張っていたものの適応できず、という流れだったかと。急激に変化しすぎたことによる弊害はあったように思われます。
最終的にはスタッフ陣との衝突があったともまことしやか噂されていましたが、それはボス監督だけでなくアヤックス側にも問題はあるような気も。確かなことはわからないのでなんとも言えませんが。

■それぞれの道へ
ボス監督はアヤックス就任前、フィテッセを離れてから半年間マッカビ・テルアビブの監督を務めていました。クライフの息子ジョルディ・クライフがTDをしていたクラブですが、不可解な移籍と思っていたところ僅か半年でアヤックス監督に就任。やはり特別なオプション付きの契約だったようですが、イスラエル滞在時に1週間ほど生前のクライフと深い話をする機会があったそうです。そこでどんな話をしたのか多くは語られていませんが、「1週間で10年分の学びがあった」とのこと。全てはボス監督の胸の内ですが、クライフの系譜を受け継ぐ者としてはこれ以上ないエピソードではないでしょうか(ロマンチシズムに過ぎますかね)。
原理主義的な物言いをすれば、ボス監督により縦への意識が強くなった。よりクライフの考えに近いフットボールになった。アヤックスにはこのまま突き進んでいって欲しかった思いもありますが、どうやら内部はそういう考えばかりでもなかったようです。

現段階では既に複数の選手に移籍の話があり、アヤックスにはいつもの光景ではあるものの気分の沈む嫌な時期です。しかしこの1年カイザーが面倒を見たヨング・アヤックスにもまだまだ有望なタレントが控えていますので、今後どんな発展を見せてくれるか、期待したいと思います。
そしてボス監督にはドルトムントでも相変わらずのアトラクティブなフットボールを、相変わらずの微妙なユーモアを、引き続き期待してます。
Bedankt Peter!


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by ajacied | 2017-06-16 19:04 | Eredivisie